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Tate Britain(テート・ブリテン美術館)より、16-17世紀絵画のジュエリー

Tate Britain(テート・ブリテン)美術館は、そもそも昔はただTate Gallery(テート・ギャラリー)と呼ばれていた。 21世紀メレニアム記念の一環で、少しテムズ川を下ったサゾーク近くの旧火力発電所の建物を再利用して、Tate Modernがオープンしたのが2000年。ここにモダン・コンテンポラリー・アートが移動収蔵された。その後本家のピムリコ近く(ミルバンクと正式には呼ばれる地区)のTateは大改装の後、15世紀以降のイギリス・アート専門の美術館として、2001年に再オープンして現在に至る。

ではなぜ、15世紀か?というと・・・どこかに以前書いたかもしれないが、それ以前の絵画は、ルネッサンス(イギリスで言うところのチューダー期)以前の中世のもの。絵画はすべて教会のために描かれるもので、絵画を絵画として鑑賞する、ということ自体が行われてはいなかった。
チューダー期の暴れん坊王様、ヘンリー8世が離婚の必要に駆られて、教皇と決別して、修道院も解散させ「イギリス国教会」なるものを作り上げた(もちろん自分が首長)のが1534年。ヨーロッパ本土の宗教改革運動と(こちらはもっと動機が純粋なのだけど・・・笑)ほぼ時期を同じくしている。商人階級の台頭で、以前のカソリック独裁政に無理が生じてきた、のも最大の原因。「金」ができると「魂の自由」を買い取りたくなるもの。あ・・・また、歴史余話になってしまった・・・。
だから、何が言いたかったかというと、「絵画」という認識は15世紀以降の「肖像画」によって始めて生まれた、当時のNew Artだったのだ、ということ。

そこで、今日はその当時トレンディだった「肖像画」から、また私のこととて、ジュエリーなどのディティールに注目したイメージを展覧してみよう。

A Young Lady Aged 21, British school, 1569
A Young Lady Aged 21 「21歳の若い女性の肖像」ブリティシュ派(作者不詳)1569年

Jewellery detail of A Young Lady Aged 21, British school, 1569
ジュエリー部のクローズアップ。
エリザベス1世戴冠から約10年後。もう「被り物(Hood)」もないし、「襞襟(Ruff)]が流行し始めた。
同じチューダー期でも、この2点が、ヘンリー8世の時代とエリザベス1世の時代のコスチュームを大きく別け隔てている。

Queen Elizabeth I, attributed to Nicholas Hilliard, about 1572-5
Queen Elizabeth I, attributed to Nicholas Hilliard, about 1572-5
「エリザベス1世女王」 ニコラス・ヒリヤード画 1572-5年頃
そのご本尊、エリザベス1世。
戴冠以前の5年間、腹違いの姉メアリー1世のカトリック復帰統治下の隠棲から、名実ともに「開放」されたエリザベス1世は、
政治的経済的に絶対王政を強化すると同時に、ファッションをも一新させた。

Jewellery detail of Queen Elizabeth I, attributed to Nicholas Hilliard, about 1572-5
上記作品ディティール。モチーフはフェニックス。

Jewellery detail of Queen Elizabeth I, attributed to Nicholas Hilliard, about 1572-5
上記作品ディティール

Jewellery detail of Queen Elizabeth I, attributed to Nicholas Hilliard, about 1572-5
上記作品ディティール

Jewellery detail of Queen Elizabeth I, attributed to Nicholas Hilliard, about 1572-5
上記作品ディティール
まさしくGloriana(栄光の)女王様にふさわしい・・・。

Lady Kytson, George Gower, 1573
Lady Kytson, George Gower, 1573
レディ・キトソン、ジョージ・ゴワー画 1573年

Portrait of Mary Kytson, Lady Darcy of Chiche, later, Lady Rivers, British School,   circa 1590
Portrait of Mary Kytson, Lady Darcy of Chiche, later, Lady Rivers, British School,   circa 1590
「レディ・ダーシー・オブ・チシェ、後のレディ・リヴァース、マリー・キトソンの肖像」ブリティッシュ派 1590年頃。
上記のレディ・キトソンの娘。

Details of Portrait of Mary Kytson, Lady Darcy of Chiche, later, Lady Rivers, British School,   circa 1590
上記作品ディティール。黒糸・金糸の刺繍。

Portrait of Mary Rogers, Lady Harington,  Marcus Gheeraerts II, 1592
Portrait of Mary Rogers, Lady Harington,  Marcus Gheeraerts II, 1592
「レディ・ハリンドン、マリー・ロジャーの肖像」マーカス・ギーラエーツ2世 1592年。

Jewellery detail of Portrait of Mary Rogers, Lady Harington,  Marcus Gheeraerts II, 1592
上記作品ディティール。
左手に持つ結び目のあるパールは、ハリンドン家の紋章だそうだ。

Portrait of lady, probably Mrs Clement Edmondes, British School 17th c, about 1605-10
「クレメント・エドモンズ夫人と思われる、貴婦人の肖像画」ブリティシュ派 1605-10年頃。

Details of Portrait of lady, probably Mrs Clement Edmondes, British School 17th c, about 1605-10
上記作品ディティール。見事なレースがふんだんに使われている。
この女性、エリザベス1世付きの女官だったそうで、お気に入りだったのか、女王からいろいろな物を下賜されている。
この肖像画で着ている海のテーマの総刺繍アンダースカートも女王のものだったのではないか、と類推されている。
7つの海を支配したエリザベス1世らしいモチーフだということで・・・。

The Cholmondeley Ladies, British School, about 1600-10
The Cholmondeley Ladies, British School, about 1600-10
「コロモンデリー家の婦人達」ブリティッシュ派 1600-10年頃
19世紀の象徴派ヤン・トーロップみたいだ・・・と思ってしまうほど妙にモダンな画風・・・。
コロモンデリー家の彼女達は同じ日に生まれ(双子という意味ではなさそう)、同じ日に結婚し、
同じ日に子供を生んだとか。テート・ブリテン所蔵の代表作の一つ。

Jewellery details of The Cholmondeley Ladies, British School, about 1600-10
上記作品ディティール。付けているジュエリーは少し違うな・・・。


しばらく続いたテート・ブリテンの特集は今回でひとまず終了。次回は・・・何にしようかな?

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