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St Pancras Renaissance (セント・パンクラス)駅

前回から引き続き、建築家George Gilbert Scott(ジョージ・ギルバート・スコット)卿のゴシック・リヴァイヴァル様式代表作で、St Pancras Renaissance (セント・パンクラス)駅とホテルのイメージ。
長年廃墟状態で捨て置かれていた、このグレードI 保存指定建築は、昨年(2011年)4月にマリオット・ホテル・チェーンとして華麗に再オープン。そのイメージは(Flickrからの)、借り物写真で以前に標本箱に詰め込んだことがある。<このページ
近くのブリティッシュ・ライブラリーに行く機会があったので、今回は表から建築を中心に・・・。
(高級ホテルに泊まった・・・などというのではないですよ、外から外から・・・笑。)


St Pancras Renaissance London Hotel
ホテル正面入り口。
左のウィングがカーブでせり出してくる構成が、ドラマティックな効果を与えている。

St Pancras Renaissance London Hotel
この重厚・華麗で装飾的なウイングに、つつみこまれるようなこのヴィジョンが、
まったく説明のつかない、個人的なノスタルジアを掻き立てる。
私がこの建築をこよなく愛してしまうのは、そのせいなのだろう。

St Pancras Renaissance London Hotel
正面エントランスは、ゴシック風アーチに縁取られた、6mクラスの吹き抜け。
その上に続くバルコニーから・・・、

St Pancras Renaissance London Hotel
最上階の上のタワーへと、装飾が立ち昇っていく。


これが、イギリスの「ゴシック」だったかというとけしてそうではなくて、かなり北イタリアのゴシック~ルネッサンス期の様式から影響を受けている。レンガと石のカラーコントラスト、バルコニーを多用するスタイルなどなど。
また、複雑なとんがり屋根はドイツなど、中央ヨーロッパのスタイルの影響。
なので、当時から「pastiche」パスティーシュ(いろいろな様式の)継ぎはぎ・・・という批判も、大いにあった。
1世代後の、William Morris(ウィリアム・モリス)などは、根っこは同じ「中世憧憬」から出ているのだけれど、スコットなどヴィクトリアン・ゴシック・リヴァイヴァル建築の、「こてこて」様式を不自然な誇張として毛嫌いしている。 ゴシック建築を「誤った」様式で再現して、本来のあるべき様式を台無しにしていると、激しく攻撃した。
モリス先生、スコット卿が亡くなった時に、"the happily dead dog"「幸いにも死んだ犬野郎め」と、思わずのたまったとか(笑)。
モリス達は、イギリス中世に実際に使われた素材や技法に忠実に、また、ピュージン、スコット、バージェスなどのヴィクトリアン・ゴシック・リヴァイヴァリスト達は、中世貴族達のスピリッツに忠実に・・・クリエイションしていたとも解釈できる。
中世の王達に「復活」してもらって、「で、お城の発注は、どちらのデザインにしますか?」とたずねたら・・・、ヴィクトリアン・ゴシック・リヴァイヴァリスト達のデザインに全員一致で発注が出ると・・・私は思う(あ、もちろんモリスも個人的に大好きだけど・・・笑)。なにしろ、連中は日本で言うなら「豊臣秀吉」テイストの人たちですからね。


St Pancras Renaissance London Hotel
正面向かって右のウイングは、まっすぐに時計搭へと伸びる。

St Pancras Renaissance London Hotel
時計搭をズームで。

St Pancras Renaissance London Hotel
窓のディーティール。

St Pancras Renaissance London Hotel
カーヴを描いた左ウィングの先端に当たる部分にテラスが作られている。
その装飾部分のディーティール。
上の手すりはヴィクトリアン期の最新テクノロジーの、鋳鉄でできている。
(V&Aには、スコット卿デザインの鋳鉄でできたThe Hereford Screenが収蔵されている。)
これなどもモリス先生に言わせると「邪道」なのだろうな・・・。

St Pancras Renaissance London Hotel
正面バルコニー部のディティール。

St Pancras Renaissance London Hotel
正面エントランス吹き抜け部。
スパイク状のものが見えるのは「鳩よけスパイク」。どこの建築も鳩には悩まされている。

St Pancras Renaissance London Hotel
ディティールをもっと「より」で。

St Pancras Renaissance London Hotel
入り口を入った、オランジェリー式のロビー。
カフェでもあるのだけれど、時間がなかったので、お茶はできずじまい。

St Pancras Renaissance London Hotel
右ウィングの端、時計搭の下から、駅への入り口が続く。

St Pancras Station
時計搭を左に折れて、駅に沿って歩道が続く。
オーニングは、コンテンポラリーなガラス製。ロンドンならではのコントラスト。

St Pancras Station
その先にはユーロスターの駅、セントパンクラス・インターナショナルへの入り口。
このちょうど向かいでは、King's Cross(キングス・クロス)駅が、これまた大改造中。
1970年代に建てられた、うっとうしいコンクリートビルのエントランス部が取り除かれ、
19世紀のファサードの後ろに柱のないドームを被せるという<こんな>、
これはこれで画期的な建築で、先月(2012年3月)再オープンしたばかり。
夏のオリンピックに向けて、ロンドンの玄関大改造は最後の追い込み。

最後に地図、ここではまだ大改造中。

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ライター:由美さん、フォトグラファー:私、のチームで昨年秋に走り回っていた「るるぶ」が出ました。
由美さんの食関連記事の、約6割方の写真を担当。
私はまだ中身を見ていないのだけれど、加工はかけずに真面目に撮ってます^^。
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